客が泥酔して二階から落下、大怪我しておおごとに
◆やっぱりタクシーの仕事は夜だ
タクシーの仕事を始めてから一ヶ月。
昼はぜんぜん稼げません。
やっぱり本番は夜。
昼と夜じゃ、時給にして倍ぐらいは違います。
でも夜は夜で大変。
なんていっても酔っぱらいが相手ですからね。
吐く客。
運転手に絡む客。
客層が悪い。
酔っ払いを乗せた後の車内の酒臭いにおいも気になるし。
そんなことを思いながら走ってたら、先日とんでもない場面に遭遇しました。
◆泥酔客が深夜にタクシーを予約、しかし...
深夜の0時ごろ、予約の無線が入ったのでお客さんを迎えに走る。
場所は飲み屋、到着したら先輩が先に来てました。
先輩とはいっても交流の薄い職場。
名前も知らないし顔も見覚えはない。
まあどうでもいいや。
しかし予約の時間になっても客が乗ってこない。
飲み屋は建物の二階にあるのだけれど、その二階で輪になって談笑している。
こちらとしては最悪のパターンです。
飲み会が終わったら早くタクシーに乗ってもらわないと困る。
本当に困る。
なんといっても0時前後は稼ぎどき。
この時間帯、22-翌日1時に、1日の半分近くの金額をを稼ぐのが普通。
みんながタクシーを利用するし、割増料金になるから稼ぎも増える。
だから、この時間帯に空振りを食うのが一番痛い。
しかし、この集団はそんなタクシードライバーの事情などおかまいなしに、予約の時間を過ぎても談笑中。
若い集団だなあ。
大学生だろうか、新社会人だろうか。
なんでもいいけど、早くしてくれないとこっちはすごく困るんだが。
やきもきしていると、「ベチャーン!!」と言う音が。
こんにゃくを床に落としたような音。
続いて叫び声。
見ると、黒い服を着た女性が地面に横たわっていました。
どうやら、手すりによりかかって談笑していたのが、泥酔していたせいで手すりをこえてしまい、二階から落下したようでした。
階段をおりてわらわらと集まってくる仲間集団。
落下した女性は横たわったままピクピクして、「おああ!!! おああ!!!」と、悲鳴のような声を上げています。
明らかにやばそう。
あかんやつや。
先輩も僕もタクシーからおりて様子を見に行く。
女性はビクンビクン小刻みに体を動かしながら嗚咽をあげている。
うわぁ。
すると、先輩がスマホを取り出す。
救急車?
警察?
いずれにせよ、この事態に立ち会ってしまった以上、立ち去ることもできず、事情聴取だの病院への搬送だので、今日はもうだめになったな...。
そんな不謹慎なことを考えてると、先輩が話し始める。
「◯号車の△△だけど、客がこけてけがしたんで帰るわ」
えっ?
帰る?
そして、僕に向かって一言。
「帰るで」
そしてタクシーに乗って颯爽と立ち去る。
客にはひとことも声をかけずに。
まじかよ...。
女性を見るとさっきと同じ状態。
あうあうと声を出して震えてる。
周囲は「救急隊!救急車!」などと叫んでパニック状態。
まじかよ...。
ま、いいか。
そして、僕も彼らをほったらかしてそこを立ち去り、仕事を再開しました。
酒を飲んだときは、怪我をしないようにね。