掃きだめで深呼吸

名古屋でタクシードライバーやってる貧乏男の日常

コロナのせいで派遣切りされてホームレス寸前の客。ほんとうにひどい世の中だ。

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◆ 深夜の客、様子がおかしいと思ったが.....

 
夜0時ごろでした。
タクシーを運転していたら、予約が入る。
 
すぐに迎えに行って乗車してもらいました。
 
しかし、どうも様子がおかしい。
というのも、この時間帯は、飲みに行った帰りのお客さんがほとんど。
しかし、この人はそんな感じじゃない。
 
年齢は僕と同じくらいの中年男性。
地味なカジュアルの服装で、リュックを背負っている。
 
目的地に向かって運転していたら、話しかけられた。
 
 
「あのー、運転手さん」
 
「はい?」
 
「目的地までどれくらいですかねえ」
 
「時間が?」
 
「いや、金額」
 
「そうですねえ、こっからだいたい7キロなんで、3000円は超えてくると思います」
 
「うーん、3000円かあ。痛いなあ」
 
 
この人に限らず、タクシーの金額を「痛い」とか「高い」とか言う人がいます。
ドライバーとしてはいい気はしませんよね。
 
高いとボヤくくらいなら乗るなと言ってやりたい。
 
ま、高いですけどね。タクシー。
 
しかし、よくよく話を聞いてみると、この客、大変な状況にあるということがわかりました。
 

 
◆ 派遣会社を信じて名古屋まで来たのに裏切られた
 
その日、彼はハローワークに行ったそうです。
そして、仕事を探していた。
しかし、なかなか仕事が見つからず、その日は諦めた。
で、近くの喫茶店で時間を潰して帰りのバスを待っていたそうです。
 
そしたら寝てしまった。
よっぽど疲れていたようで、閉店まで寝てしまった。
 
起きたらもうバスはない。
 
しかたなしにタクシーを呼んだ、とのことでした。
 
 
ハローワークに行かれたんですか。今はコロナのせいで求人もすくないんじゃないですか?」
 
「そうでした。求人はここ半年でかなり減ったらしいです」
 
「なるほど...」
 
「俺は名古屋に来てまだ半年だから、こっちのことはよくわからないし、知り合いもいないから、どうすりゃいいのかわかんないですよ」
 
「えっ お客さん、こっちの人ではないんですか?」
 
「はい、◯◯出身です」
 
 
まあ個人情報なので伏せますが、新幹線で1万以上はかかる土地です。
 
 
「◯◯から....。遠いですね」
 
「ある派遣会社に採用されてね。名古屋の仕事を紹介されてこっちに来たんですよ」
 
「ふむふむ」
 
「けど、コロナで業務は止まって、俺ら派遣は寮で待機させられてて」
 
「ずっと寮で待機ですか」
 
「うん。でも、ついに先週、寮を出てけって言われちゃって」
 
「ええ.....」
 
「交渉してなんとか今週末まで待ってもらう事になったんですけどね」
 
「それはひどいですね。わざわざ名古屋まで来たのに仕事を与えずに放り出すなんて......」
 
 
まったくひどい話です。
派遣会社から指示されて遠くの土地までやってきたのに、会社の都合で無職の状態で住居から追い出されるなんて。
 
人間をなんだと思ってるのでしょうか。
 
無責任にもほどがある。
 
 
 
◆ 感染者が多い名古屋にいるから地元にも帰れない
 
とりあえず、このままでは彼はホームレスです。
地元に帰ることを勧めてみました。
 
 
「じゃあ、いったん地元に戻られたほうがいいのでは?」
 
「前職の上司に連絡してみたんですよ。仕事ないかって」
 
「ほう」
 
「そしたら、人手不足なんだけど、難しいって」
 
「どうしてですか?」
 
「今、名古屋にいるって言ったら、感染者が多い土地だからダメだって」
 
 
なんと、名古屋にいるってだけでもうダメらしいです。
普通に差別ですよ。
 
......というわけで、彼は故郷から遠く離れた土地で、無職で家もなく、帰ることもできないという状況なのです。
 
もちろん、これはコロナのせい。
 
しかし、ひどいと思ったのは派遣会社。
 
人を採用して、遠くから名古屋に呼び寄せておいて、あまりにも無責任。
 
こんな仕打ちはないでしょう。
 
名古屋にいるからという一点だけで差別をする地元の人たちもひどいといえばひどい。
 
結局、人間の醜い部分がコロナによって明るみに出てきているということなのでしょう。
 
自分が損をしなければ、他人がどうなっても構わない。
 
自分の利益を守るためには、他者を蹴落とし、不幸にしても何ら気にしない。
 
そんな人たちが、世の中にはたくさんいるのだと思います。